1. ご相談内容
ご依頼主様(法人)において、経理を任せられていた責任者による長年横領が判明しました。横領は数年間にわたって続いていたことや、当該責任者以外にお金の流れを把握しているものがいませんでした。
調査において相手方は横領金額のうち数百万円については認めましたが、横領の全体像については語りませんでした。
相手方が認めない横領金額も多額にのぼり、判明しておらず相手方が隠している横領金額が存在することも疑われる状況でした。
相手方が横領を否認していたため、証拠がない中で横領金額の返還を求められるかに関してご相談にお越しになりました。
2. 債権回収の無料相談
弁護士が会社の状況をヒアリングしたところ、責任者による横領は明白とまで言えずとも十分立証の見込みがあることが分かりました。
弁護士は無料相談において、債権回収事案では勝訴判決を得て解決ではなく、訴訟に勝っても現実にお金を回収できない場合もあることをお伝えしました。
もっとも本件では相手方が現時点では不動産や預貯金を持っている事案でしたので、仮差押え手続きで相手方の不動産・預貯金を確保することをご提案しました。
3. 弁護士による債権回収
3.-(1) 解決までの流れ
本件では、経理責任者である相手方以外がお金の流れを把握しておらず、直ちには横領金額がどれだけあるか、相手方が横領したことを立証できるかが分からない事案でした。
また、横領という悪質な犯罪行為を行い、横領が発覚後も素直に認めない相手方は、横領金額の債権回収に弁護士が動いていることを知れば財産を隠す可能性がありました。
現実に相手方は債権回収に備えるためか財産の名義を親族に移転するなどしている動きがありました。
従って、相手方が財産隠しに動く前に事実関係を調査し、財産を確保する必要がある点がポイントとなります。
- 明確な証拠がなく、横領金額も分からない
- 相手方が財産隠しをする可能性がある
3.-(2) 横領行為の調査+仮差押えの実行
弁護士は債権回収を依頼された直後から横領行為の調査に乗り出しました。
具体的には、過去の預貯金履歴を丹念にチェックし、会社の決算資料と突き合わせることで怪しいお金の流れを把握しました。
調査により判明した責任者による横領行為は、会社代表印を悪用して金融機関から直接お金を引き出すという大胆なものでした。
そこで、金融機関に残されている資料を確認し、金融機関に赴いて担当者から直接話を聞く等して横領行為の証拠を集めました。
債権回収の訴訟を起こすことになりましたが、本件では弁護士の調査により十分な証拠があったことが裁判で役立ちました。
また、債権回収で重要となる財産確保については、横領行為がある程度判明した段階で資料に基づいて仮差押え手続きを行いました。
具体的には不動産と預金債権について仮差押えの申立てをしました。
数日後、無事に裁判所に仮差押えを認めて貰うことができ、相手方の不動産と預金債権を確保することができました。
3.-(3) 解決結果:約8500万円の債権回収に成功
弁護士が債権回収に乗り出した後も相手方は横領行為を否定していました。
本件は債権回収のために訴訟提起を行いましたが、裁判でも横領行為を否定していましたが、事前に弁護士が集めていた証拠が役立ちました。
証人尋問において、相手方は改めて横領行為を否定し、債権回収を行った弁護士を非難しました。
しかし、相手方の証言は証拠関係と矛盾するものばかり、かえって証人尋問において相手方の虚偽が暴かれました。
債権回収の裁判は勝訴することがほぼ確実になったため、相手方は任意に横領金額を返還することを申し出ました。
最終的に相手方が横領行為に基づく損害賠償請求債権のうち約8500万円を解決金として支払うことで和解が成立しました。
4. 弁護士のコメント
債権回収事件の中でも横領事案は難易度が高いと言えます。私たちは債権回収に強い意欲を持っており、横領事案の債権回収も数多く取り扱っています。
横領や詐欺のような犯罪行為に該当する債権回収の事案は、相手方も債権の存在を認めず、また悪質性が高いため財産隠しのおそれもあります。
このような場合でも、債権回収に強い弁護士であれば、様々な手段を駆使して債権回収を図ります。
債権回収を弁護士に依頼すれば、単に裁判をするだけでなく、弁護士特有の調査権限や仮差押え等の手続きも行うことができます。
財産隠しのおそれがある債権回収事案で有効なのが不動産や預金債権の仮差押えです。
仮差押えは裁判を行う前に、債権者側の言い分だけで財産を確保します。
相手方の反論を審理しないため、債権回収を弁護士に依頼したことが相手方にばれないですし、裁判と違って数日から1週間程度で迅速に結論がでる点が特徴です。
仮差押えに成功すると、裁判所が一応債権の存在を認めたことで相手方が観念して自ら返済を行うことも多いため債権回収の実効性が期待できます。
仮差押えは相手方が財産を隠してしまうと意味がなかったり、取引先の入金で預金が増加したときを狙う必要がある等のタイミングが重要です。
タイミングを逃すと仮差押えは意味がないため、貴社が債権回収に悩んでおられるときは早めに一度弁護士にご相談ください。
使い込まれた預金の債権回収は証拠が十分なく、一般的に債権回収が困難です。
しかし、債権回収に強い弁護士であれば、契約書等から明らかに債権回収が立証できる場合でなくとも、債権回収を図ることができます。
弁護士が丁寧に預金の取引履歴を整理すれば、預金の使い込みを立証することは十分可能です。本件では、長年にわたる多額の横領を立証して、約8500万円の債権回収に成功しました。