仮差押え費用はどの程度かかるの?相場や安く抑える3つの方法

仮差押えは、債権回収の手段としてとても有効な方法です。

もっとも、仮差押えをするには裁判所費用をはじめ担保金や弁護士費用など様々な費用が発生するのも事実。

 

もちろん、代金を支払ってくれない相手方に対して泣き寝入りする必要はありませんが、費用の相場が分からなくて手続きに二の足を踏んでいる人も多いようです。

そこで、今回は債務者の資産を凍結する仮差押えに必要な費用や注意点についてご説明します。

 

仮差押えは、簡易迅速な手続きであり、事実上弁済を促す効果もあるなど非常に有効な手段です。しかし、実務上は仮差押えを利用する上で費用が生じることがネックになることが少なくありません。

仮差押えを利用したいと思うなら、本記事を読んで仮差押えの費用について予め目星をつけておくとスムーズです。

 

1.     仮差押えとは

 

貴社が以下のような悩みをお持ちなら仮差押えを行うことが考えられます。

元請け業者がお金を支払ってくれない

取引先の売掛金を回収したい

 

債権回収の手段として有効なのが相手の資産を動かせない状態にしておく「仮差押え」です。たとえ相手の資産から優先的に債権回収をしたいと思っていても、債務者が手持ちの資金を従業員への給料や別会社への支払いなどに使ってしまっては、受け取る資産自体が枯渇してしまいます。

 

もちろん、正式に訴訟を起こして対処するのも一つの方法ですが、事実確認や必要書類の準備などにある程度の時間がかかるのは否めません。

仮差押えをすれば勝訴したときのために財産を確保できますし、現実には仮差押えが認められることで任意の弁済も期待できます。

つまり、仮差押えとは正式な訴訟の前段階として臨時的に行う債権回収の手段であり、時間的な余裕がなくても裁判所に認められやすい解決法なのです。

 

仮差押えをする場合には裁判所費用、担保金や弁護士費用が生じます。仮差押えを行うとなると一般的には債権回収に強い弁護士に依頼することになります。

もし自力で手続きをする場合は裁判所費用と担保金だけで済みますが、専門家に依頼する場合は弁護士費用も発生しますのでトータルで予算を立てておきましょう。

 

2.     仮差押えに必要な裁判所費用とは?

 

裁判所に仮差押えを申し立てする時に発生する費用を裁判所費用と言います。

(外部リンク)東京地裁:保全事件の申立て

 

収入印紙代の手数料として2,000円です。

予納郵券切手代は申し立ての内容によって異なり、債権仮差押えが約3,000円、不動産仮差押えが約2,000円です。予納郵券は総額だけでなく、金額ごとに組み合わせが指定されおり、裁判所ごとによって異なる場合があるの予め確認する必要があります。

(外部リンク)甲府地方裁判所:予納郵便切手組合せ一覧表

 

また、不動産の仮差押えの場合は登記を行うため登録免許税として請求額の0.4%が必要です。

 

ここまでお読みいただき、意外と仮差押えの費用は低額だなと思われたかもしれません。

しかし、実は仮差押えでは担保金が必要となり、この点が実務上は仮差押えを利用する上でのハードルとなっています。

 

3.     仮差押えに必要な担保金とは?

 

3.-(1)  担保金が必要な理由

 

債権回収に強い弁護士に依頼して仮差押えの申立てを行う場合、裁判所費用・担保金・弁護士費用という3種類の費用が発生しますが、中でも特徴的なのが担保金です。

 

通常、裁判所が仮差押えを認めるかどうかは、申し立てをした債権者の言い分を記載した陳述書や証拠となる資料によって判断されます。

しかし、仮に債権者の申し立てが事実無根のウソだった場合、全く非のない債務者に不利益が生じてしまいます。例えば、相手方の取引債権を仮差押えした場合は、取引先との信頼関係まで損なわれ兼ねません。

 

つまり、担保金とは、仮差押えを申し立てられた債務者が不当な損害を被った時のセーフガードとして、債権者に対して一定の保証金を前もって納めておくように義務付けられている費用なのです。

 

3.-(2)  担保金が高額な点が仮差押えを利用するハードル

 

担保金の金額は、債権者の言い分を裏付ける証拠資料の信頼度によって異なります。

また、仮差押えの対象物が不動産か債権かによっても異なります。なぜなら、債権を仮差押えすると第三者が仮差押えの事実を知ることになるなど不利益が大きいためです。

 

っそいて、仮差押えをするときは担保金の金額が大きなハードルとなります。

一般的に、担保金は不動産仮差押えのときは15%から20%程度、債権仮差押えのときは20%から30%程度になります。

例えば、1000万円の債権回収を行うときには、200万円前後の担保金が必要ということになります。

 

3.-(3)  担保金の取扱い

 

ただし、あくまでも担保として納めるだけですから特別な理由がなければ使用されません。もちろん、問題が解決した暁には取り戻す事も可能です。

担保金の趣旨は、貴社が債権回収の訴訟に敗訴して、相手方に不法な損害を与えたときの損害を担保するためです。

しかし、訴訟提起は法律上保護された権利でもあるため、相手方が損害賠償を請求できる不当訴訟となるのは例外的な場合だけです。

実務上は勝敗にかかわらず担保金が返還されるケースが大変ですのでご安心ください。

 

もっとも、貴社が勝訴した場合は勝訴判決の確定を待って担保取消しの手続きを行いますが、意外と1か月程度の時間がかかります。

また、貴社が敗訴した場合は担保金に関する損害賠償をするかの「権利行使催告」という手続きを行う必要があり、2~3か月程度の期間がかかります。

いずれにせよ担保金と返還手続きには相当時間がかかるということです。経営者にとって資金繰りは重要な経営課題ですが、担保金は資金繰りに悪影響を及ぼすのでこの点も含めて慎重な判断が必要になります。

 

3.-(4)  債権回収に強い弁護士による担保金交渉

 

担保金を納めると訴訟期間や返還手続きがあるため、相当期間の間はその金額が使えなくなります。従って、仮差押えをするときは、担保金をできるだけ抑える必要があります。

 

担保金の金額は、仮差押えの対象物×勝訴の見込みで決まりますが、明確に基準があるわけではありません。

東京地裁では、仮差押え時に裁判官と面接を行いますが、当該面接の結果を踏まえて担保金を裁判官が決定します。

そして、実は裁判官が決定する担保金の金額は交渉することが可能です。

 

勝訴の見込みが十分あることを説明した上で、様々な事情を踏まえて担保金の交渉を行うことで担保金を抑えられることもあります。

仮差押えを検討したいものの、資金繰りの観点から担保金をできるだけ抑えたいと思うなら、債権回収に強い弁護士に依頼して担保金交渉を行うことも考えられます。

 

4.     仮押えに必要な弁護士費用の相場は?

 

仮差押えの弁護士費用相場は事務所ごとによっても大きく異なっております。少なくとも着手金として20万円~30万円程度は想定しておいた方が良いでしょう。

 

もっとも、仮差押えのみを依頼して受任する弁護士は多くないと思います。一般的には、債権回収自体を依頼して、その中でオプションとして仮差押えがあります。

例えば、1000万円の債権回収を依頼するときは、着手金として約60万円程度、報酬金として10%程度であり、これに仮差押えをしたときの追加費用として20万円~30万円程度が必要となるイメージです。

 

債権回収に力を入れている弁護士事務所では無料相談を行っているところも少なくありません。弁護士費用は事務所ごとにも異なりますし、貴社の債権回収の見込みを確かめる意味でも弁護士の無料相談を上手く使うことをおすすめします。

 

5.     まとめ

 

仮差押えは債権回収には有効な手続きだが注意点も少なくありません。

 

 

5.-(1)  費用面から見る仮差押えのメリット・デメリット

 

まず、仮差押えのメリットは、訴訟で決着がついていない段階で、先に債務者の財産処分を禁止することです。

勝訴したときには、押さえた財産を強制執行することで債権の回収ができますし、心理的にも債務者に圧力をかけられる有効な方法です。

 

他方で、仮差押えのハードルとしては高額な担保金が挙げられます。

裁判所に利用するために必要な裁判費用は低額でも、一時的とは言え高額な担保金が必要となることは資金繰りに悪影響を与えます。

とくに証拠の状況によっては高額な保証金が必要となるケースもありますので、注意しましょう。

 

5.-(2)  仮差押えの注意点

 

仮差押えは債権者が訴訟で勝訴した時に絶大な効果を発揮しますが、応急処置的な側面をあわせ持っています。つまり、あくまで債権者が債権の回収をし損ねるリスクを軽減するための手続きなのです。

 

万が一、訴訟で債務者側の言い分が認められて申し立てを行った債権者が敗訴した場合は、逆に損害賠償を請求されるリスクも一応あり得ます。

それよりも、仮差押え段階で十分な主張立証をしなかったために、裁判官から高額な担保金を求められると資金繰りの観点では大きな影響があります。

仮差押えの申し立てをする前に、債権回収に強い弁護士に相談しておきましょう。