債権回収のための財産調査の方法

取引の相手方が代金を支払わないため裁判をして判決を取得したときは強制執行により債権回収を図ることになります。

 

相手方(債務者)が、不動産、預貯金もしくは重要な動産を持っていれば、それを差押えて回収を図ることになります。

 

しかし、強制執行により債権回収を行うときは相手方(債務者)の財産を調査する必要があります。

差押えのために相手方(債務者)の財産を調査する方法としてはどのようなものがあるのか、債権回収のための財産調査の方法について解説します。

 

1.     不動産の財産調査

 

相手方(債務者)の財産を差押えるには、まずは相手方(債務者)の財産を把握して、差押えの対象を特定する必要があります。

 

1.-(1)  不動産は差押えで最初に検討すべき対象

 

そこで、強制執行をする前に、相手方(債務者)の財産を調査する必要があるのです。差押えの対象となり得る財産としては以下のものがあります。

  • 不動産
  • 預貯金
  • 未回収の売掛金など
  • 株式や有価証券
  • 高額な動産

 

不動産は一般的に高額であり、かつ財産隠しがされにくいものですから、相手方(債務者)が不動産を所有している場合は、差押えの対象として有力な候補となります。

 

1.-(2)  不動産は担保権の存在に注意

 

もっとも、不動産は抵当権や根抵当権のような担保権が設定されていることも少なくありません。

差押えをして競売にかけても、担保権者の金融機関が先順位で配当を受け、自分たちに配当される金額はごく僅かということも考えられます。

まずは、相手方(債務者)がどのような不動産を所有しており、そこにどのような担保権がついているかを確認する必要があります。

 

1.-(3)  不動産の調査方法

 

不動産は住所が分かれば所有者や担保権の設定状況を登記から調べることが可能です。

まずは、相手方(債務者)の本店や営業所など、こちらが把握している相手方関係先の土地建物の登記情報をすべて確認することになります。

 

法務局に行き登記事項証明書を取っても良いですが、インターネットの登記情報提供サービスを利用して閲覧することも可能です。

登記情報サービス等を利用し、登記情報の甲区を見て不動産の所有権者が債務者である相手方名義になっているかを確認し、乙区を見てどのような担保権が付いているかを確認します。

(外部リンク)登記情報提供サービス

 

 

相手方(債務者)が個人事業者であれば、自宅住所の土地建物も確認します。

また、実家の不動産を持っていることもあるので、出身地の不動産調査をすることも有益です。

 

不動産は登記されているため比較的調査はしやすい対象です。

しかし、相手方(債務者)が、利用せずに隠し持っている不動産をすべて把握するのは、現実的には難しいものがあります。

そのようなときは、相手方(債務者)の取引先や元従業員などと接触できれば、そうしたところからのヒアリングで情報を得られることがあります。

 

2.     預貯金の財産調査

 

預貯金は、不動産や動産と違い現金化が容易です。従って、財産隠しをされやすい一方で、差押えに成功すれば不動産・動産と違い換価手続きは必要ありません。

そのため、相手方(債務者)に預貯金があれば、迅速な債権回収には都合が良いということになります。

 

 

2.-(1)  債権回収に強い弁護士に依頼して預貯金口座を調査

 

預貯金に対して強制執行するには、取引先の銀行及び支店を把握する必要があるのが原則です。もっとも、債権回収に強い弁護士に依頼すれば、勝訴判決に基づいてメガバンクやゆうちょ銀行であれば預貯金口座を調べることができます。

 

2.-(2)  関係者のヒアリングによる預貯金口座を調査

 

以下では自分で預貯金口座を調査したり、上記金融機関以外の預貯金口座を調べる方法について解説します。

まず、過去に受領した相手方(債務者)からの請求書などに口座が記載されている可能性があるので、すべて確認しましょう。

最近の請求書のみならず、古い請求書も探し出して確認します。

資金繰りに行き詰まった事業者が、最近まで利用していた口座は債権者に知られているので、強制執行されるのを避けるため、最近使っていなかった古い預貯金口座にお金を移動させていることがよくあるからです。

 

また、相手方(債務者)の取引先・仕入先・元従業員などに知り合いがいれば、そこからヒアリングして取引先金融機関についての情報を集めることは有効な手段です。

慎重な事業者であれば、取引先と使う銀行口座、給与支払いの口座、金融機関との取引口座、お金をプールしておく口座などを使い分けることがあります。

元従業員に聞けば、どのような金融機関・支店の担当者が良く来ていたかや、例えば金融機関のカレンダーを毎年貰っていたかなどの情報を聞き出せることもあります。

 

2.-(3)  不動産調査で取引銀行が分かることも

 

また、不動産調査をしたときに抵当権者となっている取引銀行が分かることがあります。

そこは相手方(債務者)の取引先銀行の一つということになりますので、その銀行に預貯金口座を持っている可能性は高いと言うことになります。

 

こうした手がかりが何も無い場合は、差押えをしても預貯金口座が存在せず空振りになることを覚悟したうえで、本店周辺の銀行や信用金庫に強制執行をしてみるしか手はありません。

 

3.     動産の財産調査

 

相手方(債務者)が重要な動産を所有している場合は、動産強制執行の申立てにより、これに対して強制執行をすることができます。

例えば、相手が高価な機械や重機等を持っている場合が考えられます。

 

動産の強制執行の申立書には、差押えるべき動産の保管場所を記載しなければなりません。そこで価値のある動産がどこに保管されているかを、調べて置く必要があります。

これについては、不動産調査の成果を利用して、現地を訪問すれば、目視で確認できる場合があります。

 

動産の強制執行では、相手方(債務者)の事業所に現金が置いてあれば直ちに債権回収をすることができます。

しかし、現金がないようなときでも動産の強制執行は相手方(債務者)に強いプレッシャーを与える点で効果的なことがあります。

 

4.     その他の財産調査

 

4.-(1)  調査会社の利用等による財産調査

 

興信所などの調査会社に依頼して財産調査をしてもらうこともできます。

もっとも、調査会社に特別な権限があるわけではないので、上記と同じような調査を行うくらいしか方法はありません。

 

過去には地元の銀行や信金の職員に伝手があり、預貯金口座の有無などをこっそり教えてもらえるという調査会社もありました。

しかし、現在は、金融機関の個人情報保護やコンプライアンス体制が厳格になっていますので、そのような特殊な調査は難しいでしょう。

 

4.-(2)  決算書・確定申告書の入手

 

また、財産調査には、相手方(債務者)の決算書や確定申告書及びその付属書類一式を入手するという方法もあります。

 

もっともこの方法は、現実的には難しいものがあります。強制執行される会社の代表者がこうした書類を見せてくれるということは考えにくいです。また、それ以外にこうした書類の写しを持っているのは、これを作成した税理士、経理担当の元従業員、融資の際にこうした書類の写しの提出を受けた金融機関など、限られた人物しかいないからです。

 

しかし、決算書や確定申告書を入手できれば相手方(債務者)の財産状況を丸裸にすることができます。例えば、債権回収に着手する前に支払期日の延長交渉などで、支払いを猶予する代わりに決算書・確定申告書の交付を受けるなどで入手できれば強力ですので念頭に置いておきましょう。

 

4.-(3)  財産開示制度について

 

財産開示制度は、債務者自身に財産の目録を提出させて、財産内容を開示させる制度です。裁判所を利用した制度で、不動産・預貯金・未回収売掛金・動産等の財産をすべて開示させることができます。

 

財産開示制度を使うことができれば、債権者は何を差押えるかを自由に選択できます。財産開示制度を利用するには、確定判決などの債務名義を持っている必要があります。

 

しかし、財産開示制度は現実にはあまり利用されていません。債務者が財産開示に応じないケースが多いという弱点があります。

債務者は財産開示の決定を無視しても、30万円以下の過料に処せられるだけですから、差押えがなされることを回避するには無視したほうが良いということが多いからです。

 

5.     まとめ:不動産・預貯金・動産等の差押えの難しさ

 

債権回収のために、裁判をして判決を取得しても、相手方(債務者)に差押えるものが無ければ、判決書は紙切れと同じです。

強制執行のためには、相手方(債務者)の不動産・預貯金・高額な動産・未回収の売掛金などの財産を把握しなければなりません。

 

債権回収の必要が生じたときは従前の取引関係に基づいてできる限り情報収集をしましょう。債権回収に強い弁護士に相談すれば、財産調査のヒントを得られるときもあるので、債権回収のための財産調査に行き詰ったときは無料相談を利用することも考えてみてください。