法人が債権回収を行う10の方法と上手くいくための5つのコツを解説

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法人のお客様からは「工事をしたのに代金を払って貰えない」、「売掛金が未回収のままだ」といった相談を受けることが少なくありません。

 

企業様にとって利益は上がっているのに、債権回収ができずにお金がないというのは非常に危険です。工事代金、請負代金、売掛金といった債権の種類を問わずに、きちんと債権を回収するのは非常に重要です。

 

この記事では、債権回収に悩む法人の経営者様に向けて、法人が債権回収を行う方法にはどのようなものがあるか、また債権回収のコツを解説します。

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業

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1.     法人がどのように債権回収を行うべきか

 

債権回収とは、売掛金を支払わない取引先や請負代金を支払わない元請業者からお金を回収することを言います。

一口に債権回収と言っても、個人間と企業間では債権回収の目的や方法は大きく異なります。

(参考)債権回収とは

 

法人の債権回収では「キャッシュフローの改善」が一番の目的となります。帳簿上は利益があっても債権回収ができずに手元にお金がなければ倒産せざるを得ません。

法人の債権回収を考えるときは、お金をきちんと確保する又はお金が出て行くのを防いでキャッシュフローを改善することが重要です。

 

この観点から法人の債権回収方法を考える必要があります。

 

2.     法人が債権回収を行う6つの方法

 

キャッシュフローを改善するという観点から法人が債権回収をする方法にはどのようなものがあるでしょうか。

 

2.-(1)  取引先に電話・訪問をして催促する

 

債権回収を行う一番の方法は粘り強く電話・訪問をして催促することです。債権回収の最も基本的な方法であり、自社で電話・訪問での催促をされているかもしれません。

電話・訪問をして債権回収の話し合いをするときは、相手方の言い分をよく確かめることが重要です。

お金がないのか、又は商品・工事に不満があって代金を支払わないかによって対応方針は異なるからです。。

 

2.-(2)  弁護士名義の内容証明郵便を送付する

 

取引先が逃げ回っているようなときは弁護士名義の内容証明郵便を送付することが次の債権回収方法となります。

内容証明郵便は直ちに法的効果があるわけでなく、自社名義の内容証明郵便だとさほど意味はありません。

(参考)債権回収に内容証明は有効? 知らなきゃ損する内容証明の効力や書き方のポイント

 

しかし、弁護士名義の内容証明郵便を送ると「本気で債権回収をしている」、「裁判を起こされてしまうかもしれない」と強いプレッシャーを与えることができます。

相手方がのらりくらりと逃げ回っているようなときは、弁護士名義の内容証明郵便を送ればすんなり代金が支払われることもありません。

 

2.-(3)  支払督促の申立て

 

BtoCの企業様で多数の債務者を抱えているようなときにおすすめの債権回収方法が支払督促の申立てです。例えば、クレジット会社や消費者金融会社では債権回収方法として支払督促が利用されるケースが少なくありません。

 

支払督促は郵送で申立てを行うことができ、簡単・短期間に手続が完了します。従って、少額の債権を大量に請求するときはメリットがあります。

しかし、支払督促は異議を出されると通常訴訟に移行し、相手方の裁判所で手続をしなければならないデメリットがあります。従って、複雑・高額な債権回収で異議が出されるおそれがあるときは利用を控えた方が良い債権回収方法です。

(参考)支払督促とは何か?デメリットを踏まえて有効活用できる事例を解説

 

2.-(4)  仮差押えの申立て

 

仮差押えとは、裁判で勝訴する前に相手方が持っている不動産や債権を仮に差し押さえる方法です。

仮差押えの申立ては、法律上は裁判・強制執行に備えた手続きです。しかし、仮差押えの申立てによって実質的に債権回収を行うこともできます。

仮差押えは訴訟と違って、すぐに結論がでるため迅速に債権回収ができるメリットがあります。

(参考)仮差押えをわかりやすく解説|仮差押えの効力やメリット、手続きの流れ

 

契約書等で債権が存在することが明らかであり、電話・訪問や内容証明郵便で催促をしたのに正当な理由がない債権が払われないようなときにおすすめの債権回収方法です。

例えば、工事代金や売掛金を回収することを考えており、取引先の資産状況を把握している法人様であれば仮差押えを検討するべきです。

 

2.-(5)  裁判(訴訟の提起)

 

法人が債権回収を図るための最終的な方法は裁判(訴訟)を起こすことです。

 

勝訴判決を得れば強制執行によって相手方が拒否をしても債権回収をすることができます。裁判所によって強制的に債権回収ができることが一番のメリットです。

裁判(訴訟)は時間がかかるイメージがあるかもしれませんが、相手方が争ってこずにすぐに判決が出たり又は「お金がないので分割払いにして欲しい」と和解の申出がされることも少なくありません。

 

相手方がお金を払わない理由が、商品・工事等に不満がある場合又は単にお金を出したくない場合のいずれでも裁判(訴訟の提起)は非常に強力な債権回収の方法といえます。

 

2.-(6)  強制執行

 

裁判で勝訴判決を得たことを前提に行うのが強制執行です。

 

強制執行は、裁判所が相手方の財産を差し押さえ等して強制的にお金を回収する手続です。強制執行の対象は、不動産、商品等の動産、銀行に対する預金債権や取引先への債権等を選ぶことができます。

(参考)強制執行の手続きや流れを分かりやすく解説

 

電話・訪問から始まる一般的な債権回収の流れ(内容証明郵便)が完結するのが強制執行手続です。

 

3.     4つの特殊な債権回収方法

 

一般的には上記の通り債権回収を行いますが、法人が債権回収を行う方法としてやや特殊なパターンもあり得ます。

とくに法人の債権回収では「キャッシュフローを改善する」ことが目的です。この観点からは必ずしも債務者に代金を支払って貰わなくても構いません。

 

このような観点から法人が債権回収を行う特殊な方法について解説します。

 

3.-(1)  相殺を利用してキャッシュアウトを防ぐ方法

 

法人の債権回収においては密接な関係がある取引先に対して支払いを求めることになります。

継続的に取引を行っており、取引先も貴社に対して債権を有しているような場合は相殺を行うことが考えられます。

 

相殺とは、お互いが債権を持っている場合に同じ金額で債権・債務を消滅させる方法です。相殺は、相手方の同意が必要ないため、簡易な決済手段として利用されます。

例えば、貴社が相手方に有している500万円の債権を回収する場合、もし相手方が貴社に300万円の債権を有していれば、300万円は相殺による債権回収ができます。

 

貴社に500万円の支払いはありませんが、相殺によって貴社が支払うべき300万円は支払わなくて良くなります。そのためキャッシュフローを改善するという企業様にとっての債権回収の目的は達成されるのです。

 

3.-(2)  債権譲渡によってキャッシュを回収する方法

 

債権回収の目的はキャッシュフローを改善することであり、必ずしも債務者にお金を支払わせることではありません。

そのため、債権を第三者に譲渡して、債権の譲渡代金を取得することでキャッシュを回収することも考えられます。

 

債権譲渡による債権回収の方法は、実務的に債権の譲渡先を見つける必要があり、債権の発生原因に照らして法的手続を行う必要があります。

また、債権の譲渡代金は、債権の金額から割引をされるのが通常であり、債権全額を回収できるわけではありません。

しかし、債権回収の手間・費用や失敗のリスクがなく、すぐにキャッシュを手に入れることができる点で優れた方法と言えます。

 

3.-(3)  債権者代位権を行使する方法

 

債権者代位権による債権回収は、お金を支払わない取引先が持っている債権を代わりに請求してお金を回収する方法です。

 

例えば、お金を支払わない取引先に資力がなく債権回収ができず、取引先は事実上事業を停止して連絡が取れないとします。しかし、取引先が売掛金債権を保有していることが分かっているとします。

 

このような場合、取引先の売掛金債権を直接貴社が請求できるのが債権者代位権です。

やや特殊なケースですが、上手く当てはまれば非常に強力な効果を発揮するのが債権者代位権による債権回収の方法です。

 

3.-(4)  代物弁済による債権回収

 

お金がないため支払いができない取引先から、お金ではなく在庫等を譲り受けて債権回収をする方法です。

代物弁済とは、お金の代わりに債務者の資産を譲り渡すことで支払いに代える返済手段です。

 

代物弁済は「キャッシュフローを改善する」という債権回収の目的からはやや外れてしまいます。また、代物弁済で債権回収をするためには債務者の同意が必要となります。

しかし、どうしてもお金がないので支払わねいと言われたようなときには、代物弁済によって債権回収を図ることも考えられます。

 

4.     債権回収を成功させる5つのコツ

 

法人が債権回収をする方法を解説しましたが、債権回収を成功させるためにはいくつかのコツがあります。

そこで、次に法人が債権回収を行うときのコツをそれぞれ解説します。

 

4.-(1)  お金を支払わない理由を確認する

 

債権回収のコツはまず支払われない理由を確認することです。例えば、債権の支払いがない場合には以下のようなケースが考えられます。

  • 手元にお金がないので払えない
  • 商品・工事に不満があるため代金を払いたくない
  • のらりくらし支払いを引き延ばしにしている

 

例えば、お金がないケースであれば相手方の財産状況を調査する必要があります。また、何かしらの不満・反論がある場合は裁判で白黒をつける必要があるかもしれません。

他方で、のらりくらり支払いを引き延ばしにしているだけなら、弁護士が内容証明郵便を送ることですぐに債権回収に成功するかもしれません。

 

このようにお金を支払わない理由を確認することで対応方針や債権回収のポイントが異なります。

 

4.-(2)  適切な債権回収の方法や順番を選択する

 

事前に債権回収の方法・順番をよく検討することも債権回収を成功させるコツです。なぜなら、債権回収の方法・順番を間違えると取り返しがつかないケースがあるからです。

 

例えば、安易に「弁護士に依頼して裁判をするぞ」と脅してしまった場合、法的手続を取る前に財産隠しをされるかもしれません。

もし取引先が逃げたり、財産隠しをするおそれがある場合は、こっそりと仮差押えの準備をするべきです。

 

どのように債権回収を行うかは具体的な状況によりますが、債権回収の方法・順番を間違えると取り返しがつかないこともある点はよく理解しておくべきです。

なお、貴社の事案でどのように債権回収を行うべきかは、債権回収に強い弁護士に法律相談することをおすすめします。

(参考)債権回収の無料相談なら

 

4.-(3)  相手方の資産状況を綿密に調査する

 

「無い袖は振れない」という言葉がある通り、全く無一文の相手から債権回収はできません。そこで、相手方がどのような財産を持っているのかを調査することが成功させるコツです。

 

例えば、不動産(事務所や自宅)を所有していないか、どの金融機関に預貯金があるか、どのような事業をしており債権を持っていないかを知っておく必要があります。

(参考)債権回収のための財産調査の方法

 

なお、相手方の資産状況は、そもそも取引をスタートする時点で調査しておくことをおすすめします(信用調査)。

また、相手方のオフィスに行ったり、何気ない会話の中から資産状況が分かることもあります。

お金が支払われないおそれが生じた時点で、それとなく相手方の資産状況を探っておくことも債権回収のコツと言えます。

 

4.-(4)  お金がないとき:債権回収のタイミングを考える

 

手元にお金がないために支払えないケースでは、債権回収のタイミングをはかることもコツとなります。

 

例えば、現在はお金がないものの、月末には入金が見込まれるようなケースでは、月末に入金があるタイミングを図って仮差押えの申立てをすることになります。

また、事業が不調であるようなケースでは、しばらく待って経済状況が回復してから本格的な債権回収に動くことも考えられます。

 

もちろん債権回収が遅れたために、相手方が倒産したり逃げてしまうと最悪の失敗となります。一般論としては出来る限り早く債権回収に動くべきですが、事案によってはタイミングを狙うことも債権回収のコツとなります。

 

4.-(5)  反論をして支払いをしないとき:速やかに裁判を起こす

 

お金を支払わない理由について「商品や工事に不満がある」と反論されたときは、裁判を起こして強制的に債権回収を行うべきケースです。

 

たしかに、電話や訪問をして粘り強く協議をすることは重要です。しかし、時間が経てば証拠がなくなったり、過去の経緯を忘れてしまうリスクがあります。

お金を払えと請求する側・債権回収をする側が原則としては主張・立証をする必要あります。従って、時間が経てば経つほど裁判での債権回収が難しくなります。

 

相手方が色々な理由をつけて支払いを拒否したときは、速やかに裁判を起こして白黒をつけることが債権回収のコツです。

 

5.     法人ならではの債権回収方法がある

 

債権回収と一口に言っても、個人間の借金と法人の取引債権では大きく事情が異なります。この記事では、法人が債権回収をする方法やコツについて解説しました。

 

債権回収に強い弁護士もどのような債権回収を主に取り扱っているかは異なります。もし、あなたが債権回収に悩む企業経営者であれば、法人の債権回収に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

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(参考)債権回収の無料相談なら

 

(執筆者)弁護士 坂尾陽(Akira Sakao -attorney at law-)

2009年      京都大学法学部卒業
2011年      京都大学法科大学院修了
2011年      司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~     アイシア法律事務所開業