債権回収を弁護士に依頼しようか貴社が迷っておられるなら、弁護士に依頼して本当に債権回収できるのか、債権回収に強い弁護士の選び方や弁護士費用がどの程度かかるのか不安に思われると思います。
債権回収を弁護士に依頼して、弁護士費用はかかるのに全く債権が回収できなかったら損をしてしまいます。
そこで債権回収を数多く取り扱う弁護士が、債権回収を弁護士に依頼するメリットや賢い弁護士の選び方・弁護士費用の決め方を徹底的に解説します。
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業
Contents
1. 貴社は債権回収と弁護士で悩んでいませんか?
1.-(1) 債権回収の悩み
債権回収を弁護士に依頼するか迷っておられる貴社においては、現在このような点でお困りだと思います。
- 貸したお金が返済期日に支払われない
- 取引先の資金繰りが厳しく売掛金が回収できない
- 工事をしたのに元請けがお金を支払ってくれない
- 催促をしているうちに相手方と連絡が取れなくなった
債権回収は経営の最重要課題であり、貴社が売上を上げてもお金が支払われないのであれば意味がありません。
利益が出ても資金繰りで倒産する会社があります。これは、債権回収に失敗して倒産するからです。弁護士に依頼してでも絶対に債権は回収するべきです。
1.-(2) 債権回収を弁護士に依頼すべき場合
債権回収は、貸付金、売掛金、工事代金や損害賠償請求権といった取引先や相手方にお金を支払えと請求する権利=債権という財産を保護するものです。
契約書があり債権が法律上存在するとしても、お金を支払って貰わないと意味がありません。
しかし、現実には工事をしたのに不備があったとごねて債権自体を否定したり、催促をしてもお金がない等と債権の支払いを拒否する相手が存在します。
債権を支払うという約束を無視し、連絡から逃げ回る相手方から債権回収を行うことは非常に困難です。
債権の存在に難癖をつけたり、連絡が取れなくなり、貴社が自力で債権回収することが難しくなった場合は弁護士に債権回収を依頼するべきです。
1.-(3) 債権回収に強い弁護士とは
弁護士=裁判と思われがちですが、債権回収を弁護士に依頼するときは裁判に勝つか否かは重要ではありません。
なぜなら、弁護士に債権回収の裁判を依頼して、勝訴判決を得ても相手方が倒産してお金が回収できなければ意味がありません。
債権回収に強い弁護士とは、裁判に勝てるか否かではなく、あの手この手を使って現実に債権を少しずつでも回収できる弁護士、お金を支払わせる弁護士だと言えます。
それでは、債権回収を弁護士に依頼するメリットはどのようなものでしょうか?
2. 債権回収を弁護士に依頼する一番のメリット
2.-(1) 弁護士=債権回収の可能性が高い
債権回収を弁護士に依頼する一番のメリットは、貴社が債権回収をできない事案でも弁護士であれば債権回収ができる可能性があることです。
債権回収に強い弁護士に債権回収を依頼する一番の理由は債権が回収できるからです。
当たり前ですが、弁護士に依頼することで現実に債権回収が期待できることが弁護士に依頼するメリットです。
それでは、なぜ弁護士に依頼すると債権回収の可能性が上がるのでしょうか。
2.-(2) 弁護士に依頼することで本気の債権回収交渉
債権回収を弁護士に依頼すると裁判前の交渉でも貴社が本気で債権回収に取り組んでいることが相手方に伝わります。
貴社と連絡が取れない、催促を無視する相手でも、弁護士が通知を送れば、貴社が本気で債権回収をしていると感じて債権回収交渉に応じることは少なくありません。
弁護士名義の内容証明郵便は威力絶大
相手方にとって弁護士から債権回収の内容証明郵便が届くのは緊急事態です。
連絡を無視すれば裁判沙汰になるかもしれない、債権回収に弁護士が出て来て今後どうなるのだろうと強いプレッシャーを相手方は感じます。
弁護士が内容証明郵便を送っただけですんなり債権回収に成功することも少なくありません。
貴社が自力で催促しても無理だったからと諦めずに、弁護士に債権回収を依頼して試してみることは十分考えられます。
2.-(3) 仮差押えで財産確保し、債権回収へ
債権回収を弁護士に依頼する場合、相手方が不動産や預貯金を持っているときは仮差押えを行うことが考えられます。
仮差押えは、相手方に知られることなく、相手方の財産を確保する手続きです。
債権回収のポイントは、相手方が財産を持っているかです。
弁護士が仮差押えで債権回収のために財産確保に成功すれば、債権回収の成功は目前です。
仮差押えで財産を押さえれば、債権回収の裁判を起こすことも、債権回収の交渉を続けることも可能です。
債権回収を依頼して弁護士が仮差押えに成功すれば、相手方も観念してすんなりお金を支払うことも少なくありません。
- 相手方に知られることなく預金や不動産を確保できる
- 早ければ3日から1週間程度で迅速に手続が完了する
- 但し、裁判所に提出する書類や担保金が必要
2.-(4) 強制執行で債権回収
債権自体に争いがある場合や相手方の財産が不明な場合で、弁護士が債権回収の交渉をしても交渉が決裂したときは、訴訟提起+強制執行で強制的に債権回収を行います。
債権回収を弁護士に依頼すれば、訴訟提起・強制執行という法的措置で強制的に債権回収を図ることができます。
訴訟や強制執行を貴社が自力で行うことは難しいですが、弁護士であれば法的措置を講じられるため、債権回収の可能性が格段に上がります。
とくに債権の存在に争いがある場合は、訴訟に勝って判決を得れば相手方が任意で支払うことも少なくありません。
もちろん強制執行の手続きを取れば、銀行口座等から強制的に債権回収を行うことも可能です。債権回収を依頼した弁護士が強制執行手続きを行い、相手方の預金口座がある銀行にお金を取りに行きます。
3. その他の様々なメリット
債権回収を弁護士に依頼する一番のメリットは、債権回収の可能性が上がることです。
しかし、それ以外にも債権回収を弁護士に依頼するメリットは少なくありません。
3.-(1) 弁護士=債権回収の早期実現
貴社が自力で債権回収を行う場合に比べて、弁護士に依頼した方が早期に債権回収が可能となります。
弁護士は債権回収が本業ですし、相手方に与えるプレッシャーも格段に異なります。
自力で債権回収をやろうと思えば数年かかると思われた事案でも、弁護士に依頼すれば弁護士名義の内容証明郵便を送っただけで解決できることもあります。
また、弁護士が債権回収を行い、仮差押手続きで財産を押さえれば、相手方が観念してお金を支払うこともあります。仮差押手続きは、訴訟手続きと異なり、早ければ3日程度で決着がつくため早期解決を望めます。
3.-(2) 弁護士が窓口となって債権回収の負担軽減
債権回収のために相手方に何度も電話をしたり、相手方から債権を支払わないために根拠のない非難をされたり、債権回収は精神的負担を伴います。
貴社は、本業の傍らで債権回収を行うことになり、債権回収の負担が原因で本業に悪影響がでては本末転倒です。
債権回収を弁護士に依頼すれば、弁護士が債権回収の窓口となるため、相手方の対応による精神的負担が軽減されます。
弁護士が債権回収の進捗状況等を報告するため、債権回収の負担から解放されて安心して本業に取り組むことができます。
3.-(3) 弁護士に依頼して円満な債権回収も
債権回収を弁護士に依頼するのをためらう理由として、取引先との関係が悪化するのではないか、弁護士=裁判沙汰と思われる方もあります。
とくに病院や老舗企業の経営者で地元の名士と呼ばれる方は、債権回収を弁護士に依頼して揉めるのを嫌がる方も少なくありません。
しかし、弁護士に依頼すれば必ず裁判ではありません。貴社のご要望が円満な債権回収にあるときは、ご要望に従った債権回収の方法をご提案します。
貴社が何度も催促をして相手方から無用な反論を受けて感情がこじれるよりも、弁護士が取引先に法律の論理に従って説得した方が円満に債権回収ができることも少なくありません。
弁護士に依頼すると揉めると思うのは大きな損です。
債権回収に本当に強い弁護士であれば、円満な債権回収の方法も提案してくれるはずです。
貴社が債権回収でどの点を重視するのかを率直にお伝えいただき、弁護士から債権回収方法の提案を聞いてみることは一度試されるべきです。
4. 知らなきゃ損する債権回収を依頼するときの注意点
4.-(1) 弁護士に債権回収を依頼するデメリット・リスク
債権回収を弁護士に依頼して予想外の損をしないために、弁護士に債権回収を依頼するときのデメリット・リスクもお伝えします。
弁護士に債権回収を依頼するときのリスク
- 弁護士費用倒れのリスク
- 相手方を追いつめ過ぎるリスク
- 弁護士と意見が対立するリスク
それぞれ、どのような点がデメリットやリスクであり、どうすれば回避できるかをお伝えします。
4.-(2) 弁護士費用倒れのリスク
債権回収を弁護士に依頼すると弁護士費用が生じます。
弁護士費用は、無事に回収できた債権金額の10%~30%程度が弁護士費用の相場です。
弁護士に債権回収を依頼するときは、貴社が自力で債権回収ができない事案であるため、債権回収に成功するのであれば弁護士費用を負担してでも依頼する価値はあると言えます。
少額な債権回収は弁護士費用倒れに注意
しかし、債権回収で支払われたお金が弁護士費用を下回る場合は弁護士費用倒れになります。
とくに少額な債権回収の事案では弁護士費用倒れのリスクが高くなります。
携帯電話料金や診療報酬のように小口でも多数の債権回収なら問題ありませんが、例えばネットオークションで数万円の代金が支払われない事案を弁護士に依頼するのは止めるべきです。
弁護士費用の決め方によっては損するリスクも
また、弁護士費用倒れのリスクがあるのは、弁護士費用の決め方に問題があることもあります。
一般的な弁護士費用は、裁判に勝っただけで現実にお金が支払われなくても成功報酬が生じます。
債権回収に強い弁護士であれば、完全成功報酬制や成功報酬時期を現実にお金が支払われた時点と定めてくれるはずです。
債権回収を依頼するときの弁護士費用は後ほど詳しく解説しますので、弁護士費用倒れで損をしないよう十分注意しましょう。
4.-(3) 相手方を追いつめすぎるリスク
債権回収の難しさは、相手方は全くお金がないわけではないが、全債権者にお金を支払うことは難しいケースがあることです。
無職や住所不定の相手でも、債権回収に強い弁護士が相手と仲良くなれば、毎月少しずつでも返済がなされることもあります。
このような事案で、相手方を追いつめすぎて破産等に至ってしまえば、せっかく少しずつでも回収できたのが無駄になりかねません。
弁護士の中には粘り強く債権回収の交渉をする手間を惜しんで、いきなり訴訟提起・強制執行で債権回収を図ろうとする弁護士もいます。
訴訟提起・強制執行で債権回収できる事案でないなら、強硬な法的措置で相手方を追いつめるべきではありません。
さらに、このような弁護士は、勝訴判決を得れば債権回収ができなくても成功報酬が生じる弁護士費用の定め方をすることもあります。
債権回収に強い弁護士を選ぶことが重要
債権回収に強い弁護士であれば、本当にお金がない相手方を闇雲に追い詰めるのではなく、少しずつでも毎月返済させようとします。このような点でも債権回収に強い弁護士を慎重に選ばないと損をするので気をつけましょう。
4.-(4) 弁護士と意見が対立するリスク
債権回収を弁護士に依頼するときは、貴社と弁護士の間で信頼関係を築けるかがとても重要です。
弁護士が話を聞いてくれない、債権回収の方針を巡って意見が対立する場合は、債権回収自体が失敗に終わるリスクも高まります。
貴社が円満な債権回収を希望しているのに、弁護士が強硬な文面で交渉を行えば、貴社にとってレピュテーションリスクも生じます。
他方で、債権回収の専門家である弁護士からすると、貴社の要望に従うと貴社が気付いていない大きな損が生じるリスクがあるケースもあります。このような場合に貴社の言うなりになる弁護士では債権回収に強いとは言えません。
貴社の要望を踏まえつつ、弁護士としての専門性・裁量に基づいて、貴社が納得できる債権回収の方針を提案してくれるかが重要です。
債権回収に強い弁護士であれば様々な債権回収の方法を熟知しており、貴社の要望に最適な提案をするはずです。
貴社の要望を聞かずに債権回収方法を押しつける弁護士は、債権回収になれておらず、債権回収方法を十分知っていないのかもしれません。
債権回収を弁護士に依頼するときは、貴社の要望もきちんと聞いて、様々な債権回収方法を提案してくれる弁護士を選ぶように注意しましょう。
5. 債権回収に強い弁護士の選び方
近年弁護士も増加しており、弁護士の専門分野も多様化しています。率直に言って債権回収に強い弁護士とそうでない弁護士が居ることは事実です。
さらに、ホームページや弁護士ドットコム等に力を入れている弁護士も多く、債権回収に強い弁護士を選ぶのは難しくなっています。
どのように債権回収に強い弁護士を選んだら良いのか、過去に債権回収をお願いしていた弁護士のやり方が正しいのか不安と思われるかもしれません。そこで、債権回収に強い弁護士の選び方を解説します。
5.-(1) 粘り強く債権回収を行う弁護士か
ネット営業に力を入れている弁護士の中には効率性を重視するあまり、残念ながら粘り強く債権回収に取り組まない弁護士もいます。
電話やメールだけで債権回収を受任し、内容証明郵便と何度か電話をして諦める弁護士もいます。
効率性を重視する弁護士は、弁護士の強力な武器である仮差押えや訴訟提起すら回避しようとする弁護士もいるのが事実です。
内容証明郵便や電話だけでは債権回収ができない事案でも、相手方と面談をすれば少しずつでも債権を回収できることもあります。
相手方にとって、「弁護士がまた来るかもしれない」ことは大きなプレッシャーになります。意外とアポイントを取って、弁護士が相手に会えばすぐ解決できることも少なくありません。
また、債権回収の方針によっては、迅速に仮差押えや訴訟提起をすることが一番の事案もあります。
弁護士にとって債権回収のために法的措置を取ることは事務負担が急増しますが、このような負担をいとわず依頼者のために債権回収のあらゆる方法を駆使する弁護士こそ債権回収に強い弁護士と言えるでしょう。
粘り強く債権回収を行う弁護士かは、ホームページの解決事例において、相手方に赴いて債権回収を行ったことがあるか、仮差押えや訴訟提起の法的措置で債権回収を行ったことがあるか等を確認することで分かります。
「内容証明郵便送付ですぐ支払いがあった」、「弁護士が交渉で債権回収に成功」と書いてあると、いかにもスムーズ・円滑に債権回収を行う弁護士と思われるかもしれません。
しかし、実は難しい事案になったらすぐ諦めるだけの弁護士かもしれません。内容証明郵便送付や電話交渉で債権回収ができなければ手も足も出ない弁護士のリスクもあります。
本当に困難な事案でも債権回収を行った経験があるか否かが、債権回収に強い弁護士と言える決め手です。
5.-(2) 法律相談時に弁護士が債権回収の方針を示すか
債権回収を弁護士に依頼するときは法律相談を必ず受けましょう。
最近は、債権回収の無料法律相談を行っている法律事務所も少なくないため、法律相談で弁護士に会ってアドバイスを受けることが容易になっています。
法律相談で債権回収に強い弁護士か見極める
債権回収を弁護士に依頼するときは、貴社の要望を全く考慮しない弁護士も、貴社の言うなりに弁護士も良くありません。
依頼者の話を聞かずに難解な法律用語を喋って終わりという弁護士も残念ながらいます。
他方で、債権回収に慣れていない弁護士だと、依頼者の説明を聞くのに精一杯で本当にポイントになる点を聞き出せない弁護士もいます。
債権回収に強い弁護士であれば、以下のような流れで法律相談が進むはずです。是非参考にしてみてください。
- 事案の概要の聴き取り・状況の整理
- 弁護士目線で重要な点のヒアリング
- 貴社の債権回収における要望を聞く
- 貴社の要望を踏まえて債権回収方法を提案
5.-(3) 債権回収に適した弁護士費用の定め方か
債権回収を弁護士に依頼するときに一番不安に思われるのが「高額な弁護士費用を請求されたらどうしよう」、「弁護士費用だけかかって債権回収できなかったら損をするかもしれない」ということです。
ご安心ください!
債権回収に強い弁護士であれば、貴社の事案を踏まえて債権回収に適した弁護士費用の定め方をしてくれるはずです。
債権回収を依頼したときの弁護士費用の相場や注意点は後ほど詳しく解説しますが、債権回収に強い弁護士の選び方としては以下の点をチェックしましょう。
- 完全成功報酬制も用意しているか
- 成功報酬が生じる時点はいつか
債権回収に成功したときに弁護士費用が生じる完全成功報酬制は債権回収に対する弁護士の自信の表れです。なぜなら、債権回収に失敗したときは弁護士はただ働きになるため、債権回収に自信がないと完全成功報酬制では受任できないからです。
他方で、完全成功報酬制の理由が、成功の見込みに関わらず債権回収は何でも受任して、失敗すればすぐ諦めるためだと意味がありません。
率直に債権回収の見込みがどの程度あるかを説明し、成功の見込みがあるので完全成功報酬制にしますと言ってくれるのであれば債権回収に強い弁護士と言えます。
また、成功報酬が生じる時点も重要です。勝訴判決を得れば、現実にお金が支払われなくても成功報酬が生じるのが弁護士業界では一般的です。
工事代金や請負代金で工事に不備があると主張されて支払いを拒否されている事案であれば、勝訴判決を得ることに意味があります。
しかし、債権回収の事案では、勝訴判決を得て当然だが、お金がない等の理由で現実に債権を回収することが困難であることもあります。
このような事案で訴訟に勝ったからと言って、現実に債権が弁済されていないのに成功報酬が生じるのであれば弁護士費用倒れのリスクがあります。
債権回収に強い弁護士であれば成功報酬が生じる時期を配慮してくれるはずです。
弁護士費用の定め方で債権回収に強いか見極める
弁護士費用の定め方は債権回収に取り組む弁護士の利害関係に直接影響します。
そのため、債権回収に強い弁護士かを見極める上で、どのような弁護士費用が提案されるかは参考になると言えます。
6. 解決事例:債権回収に強いからこそできること
依頼した弁護士が債権回収に強い弁護士であれば、一見すると債権回収が困難な事案であっても現実に債権を回収できることがあります。
6.-(1) 収入がない相手から債権回収
ご依頼主様(50代/男性)は、お世話になった知人に数年前に200万円お金を貸したところ、返済がされませんでした。
ご依頼主様は、過去に知人にお世話になったこともあり、また、知人が現在どこに住んでいて、どのような仕事をしているか知らなかったため、自分でお金を返して貰うのは難しいと感じておられました。
そこで、ご依頼主様は弁護士に債権回収を依頼されました。弁護士が、相手方を調査したところ、相手方は前職を退職後に事務所兼自宅で開業をしていました。しかし、収入がないため、事務所兼自宅も他人名義で借りて貰っているような有様でした。
弁護士は、内容証明郵便や電話でやり取りしているだけでは債権回収が難しいと判断し、相手方の事務所兼自宅に行って交渉をしました。たしかに相手方の生活ぶりからはお金がないようでした。
しかし、弁護士が相手方の事務所兼自宅に行って交渉を重ねたところ、相手方は弁護士が債権回収のために訪問したことにプレッシャーを感じ、少しずつでもお金を払う旨の示談書を作成してくれました。相手方は収入がないため一括返済は無理でしたが、毎月数万円ずつ返済を続けてくれ債権回収に成功しました。
6.-(2) お金を払ってくれない元請けから3000万円満額回収
ご依頼主様(60代/男性)は建築会社の経営者であり、元請け業者の下請けとして約1年間仕事をしました。しかし、元請けは、ご依頼主様の工事に不備があり自分も代金を受け取っていない、資金繰りが厳しくてお金が払えない等と言って約3000万円の代金を支払いませんでした。
元請けがお金を払ってくれないと自分の会社が潰れてしまうためご依頼主様は債権回収を弁護士に依頼しました。弁護士が元請け業者を調査したところ、元請け業者は多数の取引先が存在していることが分かりました。そこで、弁護士が元請け業者の取引先に対する請負代金債権について仮差押えを行いました。
仮差押えは成功しましたが元請け業者はそれでも代金を支払おうとしません。そこで、弁護士は速やかにお金を払ってくれない元請け業者に対して訴訟を提起し、請負代金を請求しました。訴訟の結果、元請けから請負代金3000万円の請求が認められたことはもちろん、元請けの支払いが遅れたことによる遅延損害金400万円を加えて、合計3400万円の債権回収に成功しました。
6.-(3) 横領犯から8500万円の債権回収に成功
ご依頼主様(法人)において、会社の預金を長年使い込んでいた横領事案が発覚しました。横領犯は一部の横領は認めましたが、大部分の横領は認めませんでした。横領犯や詐欺犯といった犯罪行為をした相手方は非常に悪質であり、一般的に債権回収も困難です。本件でも、横領の事実を立証できるか、勝訴しても財産を隠匿されるのではないかなどの課題がありました。
しかし、債権回収に強い弁護士であれば、難易度の高い債権回収の事案でも債権回収に成功することができます。本件では、弁護士が会社のお金の流れを丁寧に調査するとともに、相手方の不動産・預金債権について仮差押えを行ってプレッシャーを与えました。
相手方は、裁判の場でも横領の事実を否定していましたが、丁寧な裏付け調査と矛盾をする相手方の虚偽証言が暴かれたことや、仮差押え手続きで財産を確保していたことから、最終的に横領金額約8500万円を返還することで和解が成立しました。
6.-(4) 債権回収に強い弁護士のポイントまとめ
- 収入がない相手方とも粘り強く債権回収交渉
- 仮差押えや訴訟手続き等の法的措置も駆使
- 勝訴判決を得るだけでなく現実の支払いまで確保
7. 早めに弁護士に債権回収を依頼するべき事案
弁護士に債権回収を依頼すると弁護士費用が生じるため、可能な限り貴社で自力で債権回収を試みられると思います。しかし、以下のような事案では早めに弁護士に債権回収を依頼することをおすすめします。
- 200万円以上の高額な債権回収
- 債権自体に争いがある請負代金・工事代金の回収
- 相手方の財産が判明している場合の債権回収
7.-(1) 200万円以上の高額な債権回収
弁護士に案件を依頼する場合の弁護士費用は少なくとも50~60万円程度になります。従って数十万円程度の債権回収を弁護士に依頼するメリットはないでしょう。
とくに債権回収に強い弁護士は丁寧に債権回収に取り組むため多くの案件は受任できませんし、他方で多数の債権回収を依頼されるため、少額の債権回収案件はお断りせざるを得ません。
債権回収に強い弁護士に依頼するべき事案は、少なくとも200万円以上の高額な債権回収案件を目安と考えた方が良いでしょう。
7.-(2) 債権自体に争いがある工事代金・請負代金の回収
工事をしたのに元請けがお金を払ってくれない、思っていた仕上がりと異なると言われて請負代金を払ってくれないケースは少なくありません。
工事代金・請負代金の債権回収は、債権自体に争いが生じやすいと言えます。
債権自体に争いがある場合は相手方も支払いを拒否する正当な理由があると思い込んでいるので、貴社が自力で債権回収を行うのは非常に困難です。
他方で、訴訟を提起することで裁判所が債権回収を認めれば、相手方はお金がない訳ではないため支払いに応じることが期待できます。
従って、工事代金や請負代金の回収で、相手方が難癖をつけて債権自体を争ってくる場合は、弁護士に依頼して速やかに訴訟提起をした方が感情的な言い争いにならずに円満解決が期待できます。
7.-(3) 相手方が財産を持っている
相手方の預金口座の銀行名・支店名が分かっている、相手方の取引先が分かっている、相手方の所有不動産が分かっているなどの相手方が財産を持っているときも債権回収を早めに弁護士に依頼しましょう。
相手方の財産が判明しているときは、弁護士であれば速やかに仮差押えを行って財産を確保できます。
債権回収を正当な理由なく拒否している場合は、相手方も資金繰りに窮しており、相手方が財産を隠したり、又は使い果たしてしまう可能性があります。
従って、債権回収の着手が遅れると債権回収ができなくなるリスクがあります。
相手方の財産を把握しているときは債権回収に強い弁護士であれば債権回収は容易です。
しかし、貴社が自力で債権回収を行おうとして、相手方にしつこく連絡をすれば財産を隠されるかもしれません。
財産を隠されると債権回収が困難になります。下手に相手を刺激するよりは、弁護士に依頼して速やかに債権回収のための財産確保に動いた方が良いでしょう。
7.-(4) 悩まず弁護士に無料相談を
200万円以上の高額な債権回収の事案であれば弁護士に依頼するメリットがある可能性が高いと言えます。
早めに弁護士に依頼するか分からないときは、あまり悩まず弁護士に無料相談をすることをおすすめします。
債権回収の事案は無料相談を行っている弁護士も少なくありません。また、相談をしたからと言って必ず弁護士に依頼しなければならないわけでもありません。
手遅れの事態になってから弁護士に相談しても遅いので、弁護士に依頼するか迷ったときは悩まず弁護士に無料相談をしておくことをおすすめします。
8. 債権回収の弁護士費用の注意点や相場
貴社が弁護士に債権回収を依頼することを決めて、債権回収に強い弁護士を選んだとしても、最後に気になるのが弁護士費用だと思います。弁護士に依頼する前に弁護士費用の相場や安く抑えるポイントをきちんと把握しておきましょう。
8.-(1) 弁護士費用=着手金と報酬金
債権回収の弁護士費用は着手金と報酬金があります。
着手金は請求金額に応じて依頼時点で支払うものであり、債権回収の成否に関わらず支払うものです。
これに対し、報酬金は、債権回収に成功したときに弁護士に依頼することで得た経済的利益に応じて支払うものです。
着手金は成否に関係なく支払う弁護士費用であり、報酬金は成功の度合いに応じて支払う弁護士費用です。
8.-(2) 報酬金のポイントは報酬が生じる時点
債権回収を弁護士に依頼するときの特殊性として、裁判に勝訴しても債権回収ができないことがあることです。
例えば、お金がない相手方に対する貸付金債権の回収では、金銭消費貸借契約書があり、お金の振込履歴もあるため貸付金債権の存在は明らかですが、お金がないことを理由に債権回収を拒否されます。
しかし、一般的に弁護士費用のうち報酬金は、勝訴判決を得た段階で発生します。
従って、勝訴判決を得たけれど、お金がない相手方から一円も債権回収ができていなくても弁護士に対して報酬金を払わなければならないこともあります。
債権回収案件を数多く取り扱っている弁護士であれば、債権回収事案の特殊性を踏まえて、現実にお金を回収できた時点を報酬金発生のタイミングにする等配慮してくれます。
しかし、弁護士に債権回収を依頼する貴社においても、成功報酬金が生じる時点には注意をして実態に即してないと感じた場合は弁護士と交渉するべきです。
8.-(3) 完全成功報酬制による依頼
完全成功報酬制は着手金を支払わず、債権回収に成功したときに報酬金だけを支払う弁護士費用の定め方です。
債権回収が困難でご依頼者様に弁護士費用倒れのリスクがあるものの、債権回収に自信がある弁護士がリスクを取って提案するのが完全成功報酬制です。
完全成功報酬制はご依頼主様・弁護士に双方にメリット
ご依頼者様は債権回収に成功するか分からないのに着手金を支払うリスクを回避できますし、債権回収に自信がある弁護士にとっては弁護士費用倒れで依頼されないことを回避できるため双方にメリットがあります。
もっとも、完全成功報酬制は弁護士がただ働きのリスクを負うため、通常よりは弁護士費用の料率が高めに設定されています。
また、事案の内容によっては完全成功報酬制が相応しくない事案もあります。
弁護士の中には完全成功報酬をうたって受任し、内容証明と電話で債権回収に失敗したら終わりという弁護士も残念ながら存在します。
完全成功報酬制で弁護士に債権回収を依頼するときは、完全成功報酬制のリスクやデメリットも踏まえて弁護士から十分な説明を受けて依頼しましょう。
8.-(4) 弁護士費用の相場:着手金+報酬金
着手金+報酬金で弁護士に依頼するときは、多くの弁護士が旧弁護士報酬基準規程に従って弁護士費用を定めます。
旧弁護士報酬基準規程は、日弁連が過去に適正妥当な弁護士報酬を定める趣旨で作成したものであり、現在も多くの弁護士がこれに従う弁護士費用の相場と言えます。
着手金+報酬金=債権額の約10%~24%
金額 | 着手金 | 報酬金 |
300万円以下 | 8% | 16% |
300万円~3000万円 | 5%+9万円 | 10%+18万円 |
3000万円~3億円 | 3%+69万円 | 6%+138万円 |
8.-(5) 完全成功報酬制の弁護士費用相場
完全成功報酬制の場合は明確な弁護士費用の相場は存在しません。
債権回収の難易度、相手方の資力の有無、弁護士が何をどこまでやるかに応じて、事案に応じて見積りがなされるのが一般的だと思われます。
債権回収の金額にもよりますが、着手金+報酬金よりも弁護士がリスクを負うため債権額に対する料率は高額になる傾向があります。
事案にもよりますが、回収できた債権額に対して15%から30%程度であれば完全成功報酬制の場合の弁護士費用相場と言えるでしょう。
9. 債権回収と顧問弁護士の活用
貴社において債権回収が頻繁に生じるようであれば顧問弁護士を活用することも考えられます。債権回収において顧問弁護士をどのように活用できるのでしょうか?
9.-(1) 顧問契約の範囲内で債権回収
顧問契約の内容にもよりますが、債権回収の方針に関する法律相談や簡単な内容証明郵便の作成は顧問契約の範囲内で対応できることも少なくありません。
弁護士名義の内容証明郵便を送れば、すんなり債権回収ができることもあります。
顧問弁護士がいれば顧問契約の範囲内である程度の債権回収が期待できます。
9.-(2) 債権の回収費用を割引価格で
顧問契約を締結していても、仮差押えや訴訟・強制執行は顧問料とは別料金であることが一般的です。
しかし、顧問契約を締結していれば、通常の弁護士費用の5~20%程度の割引価格が用意されていることがほとんどです。
そのため、債権回収を何度か依頼する可能性があるなら顧問契約を締結した方が弁護士費用面でメリットがある場合があります。
9.-(3) 債権回収に強い弁護士の迅速な対応が期待できる
債権回収に強い弁護士は、丁寧に案件に取り組むため数多くの受任ができません。他方で債権回収に強いと評判になれば法律相談や依頼の問い合わせはひっきりなしです。
そのため、債権回収に強い弁護士の中には顧問会社でなければ受任しない弁護士もいるようです。とくに少額の債権回収を依頼するような場合は、顧問契約を締結しないと受任できないと断られることもあります。
他方で、顧問会社からの依頼であれば、優先的な対応が期待できますし、会社の実情を弁護士が熟知しているため迅速に案件処理が可能です。
顧問契約をすることで債権回収に強い弁護士による迅速な対応が期待できると言えます。
9.-(4) そもそも法務面に弱点がある場合も
貴社が頻繁に債権回収の問題に悩んでいるのであれば、そもそも法務面に弱点があるのかもしれません。
顧問弁護士に受注フローの見直しや契約書チェックを依頼することで、債権回収問題が生じることを予防できます。
・顧問契約の範囲内で内容証明郵便送付
・法的措置を取る場合でも割引価格の弁護士費用
・債権回収に強い弁護士が優先的に対応
・法務面を強化し、債権トラブルの予防
10. まとめ
債権回収を弁護士に依頼するべきか、債権回収に強い弁護士をどう選ぶかを解説しました。
裁判で勝訴判決を得ても相手方がお金を支払わないこともあるのが債権回収の難しさです。
工事代金や請負代金で相手方が難癖をつけて債権自体を争っているのか、貸付金債権があることは明らかだが相手方が支払えないと拒否しているのかによって、債権回収と言っても方針は全くことなります。
弁護士が内容証明郵便を送ったため、財産を隠されたり、破産申立てをされて事態が悪化することもあります。
このように債権回収を下手に弁護士に依頼するとリスクもあります。
弁護士と方針を十分に協議して、貴社の事案で最適な債権回収の方法を提案してくれる弁護士が債権回収に強い弁護士と言えるでしょう。
貴社が債権回収を依頼するときに、この記事が参考になりましたら幸いです。