「債権回収を代行して欲しい」、「債権回収を委託したい」と思われる企業は少なくありません。
本業に集中するためには債権回収の代行を外部委託する方が良いケースもあるでしょう。
もっとも、債権回収の代行や委託については様々な方法があります。適切な委託先に債権回収を任せることが重要です。
この記事では、債権回収を代行するサービスにはどのようなものがあるか、債権回収の代行を外部委託するときの違いや注意点を解説します。
2009年 京都大学法学部卒業
2011年 京都大学法科大学院修了
2011年 司法試験合格
2012年~2016年 森・濱田松本法律事務所所属
2016年~ アイシア法律事務所開業
1. 債権回収の代行サービスについて
債権回収の代行には、債権回収会社、ファクタリング、弁護士による債権回収があります。一口に債権回収の代行と言っても、どのような法律関係で、どのような費用が生じるかは様々です。
1.-(1) 債権回収会社(サービサー)
債権回収会社とは、特別の許可を得て金融機関等の債権回収を行うものであり、サービサーとも言われます。
債権回収会社による債権回収の代行は、依頼者から債権回収会社が債権を買い取って行うことになります。
依頼者にとっては、債権買取の時点で未回収の債権が現金化できるメリットがあります。
他方で、債権回収会社による買取金額は債権の額面金額よりも低額です。債権全額を回収できるわけではない点がデメリットになります。
また、債権回収会社が扱うのは「特定金銭債権」(債権管理回収業に関する特別措置法2条1項)とされています。
「特定金銭債権」とは、要するに金融機関の貸付金等です。従って、一般の企業は債権回収会社を使えないケースも多いです。
1.-(2) ファクタリング
ファクタリングとは売掛債権の現金化のことを言います。ファクタリング会社が売掛金債権を買い取って、必要に応じて債権回収まで代行します。
基本的にファクタリングが対象とするのは未回収のおそれがない売掛金債権であり、債権の支払期日前に買取を行うことがポイントになります。
例えば、取引先からの売掛金債権の代金支払期日が3か月先ではあるものの、現時点で現金が必要である場合にファクタリングは有力な手段です。
ファクタリングには2社間ファクタリング・3社間ファクタリングがありますが、手数料としては概ね10~20%程度とされています。
ファクタリングは、支払期日前の債権であり債権回収の見込みが高そうなものに原則として限られます。
従って、自社で支払いを求めたものの債権が支払われないため債権回収を外部委託しようとするケースには不向きです。
1.-(3) 弁護士事務所による債権回収
弁護士事務所による債権回収は、債権回収会社やファクタリングと異なり、純粋に債権回収の代行をするものです。また、対象となる債権に限定もありません。
弁護士に債権回収を委託しても直ちに現金化できるわけではありません。弁護士が債務者に対して債権回収を行って、債務者が支払いを行うことで債権が現金となります。
債権回収の弁護士費用は、回収する債権の金額や何をどこまでやるかによって異なりますが、概ね債権金額の10%から30%程度です。
弁護士による債権回収の強みは、どのような債権回収であっても代行できることと、支払いが遅れている又は支払いを拒否された債権も委託できることです。
債権回収会社やファクタリングに委託できないケースでも、弁護士であれば債権回収の代行を委託できるメリットがあります。
2. 債権回収の代行の委託先を選ぶポイント
2.-(1) 貴社が金融機関等か?
貴社が金融機関等であり、債権回収を代行したい債権が「特定金融債権」に該当するのであれば債権回収会社が有力な手段になります。
逆に、貴社が金融機関等でない会社であれば、債権回収の代行先として債権回収会社を選ぶことはできません。
2.-(2) 支払期日前の債権か?
債権回収を委託するのが支払期日前の債権であればファクタリングを利用することが考えられます。
弁護士事務所による債権回収は、貴社を代理するものであり支払期日前であれば債務者に対して請求することができません。
他方で、自社で債権回収を行ったものの難しいため、債権回収の代行や委託を考えているのであればファクタリングは利用できないケースが多いでしょう。
2.-(3) 上記に当てはまらない場合
貴社が金融機関等でなく、債権回収を委託するのが支払期日を過ぎても支払われない債権であれば弁護士に債権回収の代行を委託することになります。
弁護士の債権回収は、取引先が「お金がなくて払えない」又は「商品・サービスに不備があったので代金支払義務がない」と主張しているようなケースでも利用できます。
(参考)債権回収とは
債権回収を弁護士に依頼するときの選び方については下記記事をご覧ください。
(参考)債権回収に強い弁護士の選び方
3. どのように弁護士が債権回収を代行するか?
弁護士に債権回収の代行を委託したときは、弁護士は様々な方法で債権回収を行います。
3.-(1) 相手方に対する債権回収交渉の代行
弁護士が債権回収を代行するときは少なくとも相手方との交渉全体を行うことになります。
例えば、電話だけをして欲しい、債権回収に立ち会って欲しいと、債権回収の一部だけを委託することはできません。
まず弁護士名義の内容証明郵便を送付して、債権の支払いを請求するとともに弁護士が債権回収の交渉窓口になったことを通知します。
また、相手方に対して電話をしたり、直接訪問をしたりして債権回収を図ります。
(参考)債権回収に内容証明は有効? 知らなきゃ損する内容証明の効力や書き方のポイント
3.-(2) 法的手続による債権回収の代行
相手方が任意で債権回収を行わない場合は、弁護士が法的手続の代理人となって債権回収を行います。
弁護士が債権回収を行う場合、最初から交渉から裁判まで委託を受けるケースや、まずは交渉段階だけ委託を受けるケース等があります。
もっとも一般的な法的手続としては、裁判(民事訴訟)を起こして債権回収を行うことになります。
また、法的手続と言っても裁判(民事訴訟)だけでなく、仮差押えや強制執行等の手段もあります。弁護士に債権回収を委託するときは仮差押えや強制執行は別料金となるケースが多いです。
(参考)仮差押えをわかりやすく解説|仮差押えの効力やメリット、手続きの流れ
3.-(3) 書類の作成
弁護士が債権回収を代行するときに必要となる書類の作成も合わせて行います。た
例えば、債権回収の交渉を委託すれば内容証明郵便を作成し、債権の支払いに合意すれば和解書・合意書を作成します。
また、法的手続による債権回収の代行では、訴状や仮差押申立書等の裁判に必要な書類を作成します。
書類の作成だけを委託するのでない限り、弁護士が債権回収を代行するときに書類の作成自体で別途費用がかかることはないので安心ください。
例えば、「債権回収の交渉」をパッケージで委託し、その弁護士費用の中に内容証明郵便の作成・送付や和解書の作成の費用も含まれているイメージです。
4. 委託先の特徴を踏まえて債権回収の代行を委託する
債権回収の代行業者や代行サービスには様々なものがあります。債権回収の代行を委託するときは委託先の特徴をしっかり知っておきましょう。
貴社が金融機関等であり、対象となるのが「特定金銭債権」に該当するのであれば債権回収会社が利用できます。また、支払期日前の債権を現金化したいのであればファクタリング会社が適しています。
他方で、貴社が金融機関等でなく、既に支払期日を過ぎても支払いがなされていない債権の回収は弁護士に委託することになります。
弁護士に債権回収を委託するときは、まずは無料相談においてどの範囲で委託するかや弁護士費用を確かめることをおすすめします。当事務所でも企業様の債権回収の無料相談をお受けしていますので是非お問合せください。
(参考)債権回収の無料相談なら