1. 債権回収を自分で行うメリット・デメリット
1.-(1) 債権回収の費用について
債権回収を自分で行うメリットは、債権回収の費用を低額に抑えられることがあります。とくに個人間の債権回収は、債権金額が低額である場合が多いため費用をかけられずに自分で債権回収を行うケースは多いと言えます。
(参考)個人間の債権回収とは
債権回収を自分で行う理由として、弁護士費用がかからずに費用を抑えられると考える方も少なくありません。しかし、債権回収の費用は、弁護士費用だけではなく、債権回収のための調査費用や内容証明郵便や訴訟手続等の費用もあります。
自分で債権回収を行うと無駄な調査や手続のために必要以上に費用がかかるデメリットもあり得ます。
また、費用を抑えるためにそもそも債権回収に失敗しては意味がありません。
企業による債権回収は、債権金額が高額であり、債権回収に失敗できない場面もあります。従って、このような場合は、自分で債権回収を行うデメリットが大きいと言えます。
1.-(2) 債権回収のノウハウについて
企業による債権回収は、債権回収のノウハウを蓄積する観点から自分で債権回収を行うメリットがある場合もあります。
企業による債権回収は事業上のリスクであり、事業を続ける上で継続的に発生する業務でもあるからです。
自分で債権回収を行うことで簡単な債権回収であれば内製化できるノウハウを得られるメリットがあります。また、債権回収ができない原因を自分が把握すれば、予め対策を取れることもあります。
もっとも、継続的に債権回収が業務と生じているのであれば、取引自体に何らかの欠陥がある場合もあります。このような場合は、契約条件・支払条件を見直す、契約書・注文書・利用規約を整備する、適切な与信管理を行うなどの対策が必要です。債権回収に強い弁護士に相談して、事前に債権を回収できないことを予防する対策を立てることが望ましいでしょう。
2. 弁護士に債権回収を依頼するメリット・デメリット
2.-(1) 債権回収の見込み
弁護士に債権回収を依頼する一番のメリットは債権回収の見込みが高いことでしょう。
例えば、連絡がつかずに債権回収ができないケースでは、弁護士名義の内容証明郵便を送付するだけで相手方が支払いに応じるケースもあります。
また、
また、弁護士の調査権限や仮差押え・訴訟提起などの法的措置を駆使することで、強制的に債権回収を行うノウハウもあります。
2.-(2) 債権回収の負担軽減のメリット
債権回収のノウハウもない中で試行錯誤しながら債権回収を行う負担は無視できません。
とくに企業による債権回収であれば、債権回収の弁護士費用を惜しんで時間を費やすよりも、本業に集中した方が経済的にメリットがあることも少なくありません。
弁護士に債権回収を依頼すれば、弁護士が手続きを行うためご自身の負担は最小限に押さえられます。また、弁護士が窓口となって相手方と直接やり取りをせずにすむので、ストレスも軽減できます。
2.-(3) 迅速な債権回収を実現できるメリット
債権回収に強い弁護士であれば蓄積されたノウハウに基づいて、迅速に債権回収を行うことができます。
また、相手方としても弁護士を介さないやり取りではのらりくらりと時間稼ぎをしても、弁護士が出てくれば支払いに応じるか拒否するかの態度を明らかにせざるを得ません。
とくに企業による債権回収では、資金繰りや決算期等の関係で時間を意識しながら債権回収を行う必要があります。
たしかに、弁護士に依頼して裁判手続を行うとある程度の時間はかかります。しかし、少なくとも早期段階で弁護士名義の内容証明郵便を送って、相手方の態度次第で迅速な意思決定をした方が良い場面も少なくありません。
2.-(4) 円満な債権回収のメリット
企業による債権回収では継続的な取引関係があることが債権回収の支障になる場合もあります。このような場合は、弁護士に債権回収を依頼すると円満に解決できるというメリットもあり得ます。
弁護士に依頼すると本格的な紛争になると考える方もおられます。しかし、弁護士のスタイルにもよりますが、弁護士という第三者が介入する方が債権回収の問題を冷静に解決できる場合も少なくありません。
とくに、契約条件や支払条件に対する誤解が積み重なって、感情的なもつれから支払いを拒否されているようなケースでは、取引先も弁護士の方が冷静に考えていることを伝えやすいこともあります。
取引関係を考えて円満に債権回収を行いたいときは、債権回収の交渉に強い弁護士に依頼するメリットがあると言えるでしょう。
2.-(5) 弁護士費用倒れのリスク
弁護士に債権回収を依頼するデメリットは、弁護士費用がかかったものの債権回収に失敗をして弁護士費用倒れになるリスクがある点です。
債権回収に成功すれば、弁護士費用を支払っても、自分で債権回収をして失敗するよりはメリットは大きいからです。
従って、弁護士に依頼しても債権回収を失敗するリスクがあるかを見極めることが重要です。この観点からは債権回収に強い弁護士を選ぶときに以下の点はとくに判断材料にするべきです。
- 弁護士が債権回収の見込みを適切に説明してくれるか
- 債権回収のリスクに応じた適切な弁護士費用を提案してくれるか
また、事案に応じてですが弁護士費用を完全成功報酬制にすることも考えられます。債権回収に成功したときに弁護士費用を支払う完全成功報酬制で依頼できるのであれば、弁護士に債権回収を依頼するメリットはほとんどないと言えるでしょう。